住宅地の真横にあるのが信じられないほど、原始的な雰囲気の野湯。
市によって厳格に管理されているからこそ、なせる業です。
地名に残る旧温泉リゾート
ユタ州プロボ・オレム都市圏の一角を占めるサラトガ・スプリングス市。
1997年に自治体として発足して以降、急速に発展したベッドタウンです。

「サラトガ」という地名にぴんと来る人もいるかも。
そう、鉱泉で世界的に有名なニューヨーク州サラトガ・スプリングスにちなんだ命名なのです。
-
参考ルーズベルト・バス&スパ(サラトガ・スプリングス) - ニューヨーク州
あのニューヨークに、天然温泉が湧いてるって知ってましたか? 冷鉱泉ですが炭酸シュワシュワのパワフルな泉質。 1935年創業の歴史的なバスハウスで入浴します。 サラトガ・スプリングスで飲泉三昧 マンハッ ...

ユタ湖の水がグレートソルト湖に向かってジョーダン川から流出している周辺に、太古の昔から温泉が湧いていたといいます。
1884年、温泉資源に着目したドイツ移民、ジョン・ベックスがベックス・サラトガ・スプリングスなるリゾートを建設しました。

20世紀初頭、全米に温泉文化が花開いた時代にリゾートは隆盛を極めましたが、しだいに時代に取り残されていきました。
1995年、リゾートは投資ファンドに売却され、住宅地へと生まれ変わりました。

施設の名残である温泉プールなどは、地域住民だけが利用できるプライベートパークになっています。
今回私が訪れたのは、その北側に隣接する市民公園で、誰でも無料で利用できる野湯があります。

駐車場から温泉までは往復1km弱のハイキング。
ユタ湖岸の、長閑な風景の中を歩きました。

遊歩道が右に大きくカーブするところで左の脇道にそれたら、そこが目的地。

画期的な温泉保護
生え放題の下草に囲まれた広場に出てきました。
気温の低い早朝には、中央の池から湯けむりが上がっているのが確認できました。

数分前に新興住宅地の中を通り抜けてきたのが信じられないほど、原始的な光景。
人工物はハンドメイドの木製ベンチがいくつかあるだけでした。

池のふちや底も、自然のままの泥。
踏み入れると、正直言って不快な感触とともに、足が泥の中に埋まってしまいました。

池の温度は約38℃、池の底にある湧出点では、更に熱い湯が沸きあがっているのが分かりました。
湯は泥っぽいにごりを生じ、弱い硫化水素臭を伴っていました。

公園として変に整備されることなく、壊れやすい地熱活動がそのまま残され、かつ入浴可能にされているのには驚きました。
市による厳格な管理の結果です。

すぐそばに警察署があり、6~22時の入場時間、アルコール類の持ち込み、水着着用の徹底などのルールに違反すれば、高額の罰金刑が課されます。
警官の巡回が頻繁に行われ、秩序が保たれているというわけです。

管理者不在のまま、商用利用のハードルも高いため、荒れるがままに任せている野湯が多いアメリカにおいては画期的な事例でしょう。



温水は溝を伝って流出し、二つの小さな湯だまりを形成しながらユタ湖に到達していました。

まとめ
Inlet Park (Saratoga) Hot Springs, Saratoga Springs, Utah, U.S.
私の好み
種類:野湯
ルール:水着着用
塩素消毒:なし
泉温:~38℃