ヒ素で汚染された温泉湖、絶滅危惧種の魚、20 世紀初頭の産業遺産。
これはもう行くしかない!
ホウ砂精製所の遺構
オレゴン州南東部のアルヴォード砂漠。
スティーンズ山の東麓にあり、周囲を断層に囲まれた盆地になっています。
プラヤ湖と呼ばれる地形で、通常は乾燥した湖底の様相を呈しています。
ここに流入した雨水や地熱水は蒸発することでしか流出せず、蒸発の際に地表に塩鉱物を堆積させます。
ボラックス・レイク・ホットスプリングスは、砂漠を南北に走る断層帯から湧く温泉です。
Fieldsという人口20人程度の集落から、北東へ約25分のドライブ。
荒れたダート道を走るため、ロードクリアランスの高い車が推奨されます。
温泉までゲートが二つありました。
一つ目は開いており、温泉が危険なほど熱く、人体の許容限界の25倍のヒ素を含んでいる旨の注意書きがありました。
二つ目は閉鎖されていたので、ここで降車。
わだちを頼りに、片道700m程度のハイキング。
右手にはボラックス湖から流出した水が溜まるリトル・ボラックス湖があり、訪問時は干上がっていました。
緩やかなカーブの先に、奇妙な盛り土が見えてきました。
無造作に捨てられたこれらは、かつてのホウ砂精製所の産業遺産です。
1897年、当地にホウ酸ナトリウムが無尽蔵にあると聞きつけたネバダ州の実業家がTwenty Mule Team Borax Companyを設立。
商標紛争を経た翌年、Rose Valley Borax Companyに社名を変更。
約30名の中国人が地表の堆積物をかき集め、鉄製タンクに投入したといいます。
タンクの中で湖水と混ぜ合わせて加熱し、ホウ砂の結晶を精製。
できあがった結晶はラバに引かれた駅馬車で、ネバダ州ウィネマッカまで運搬されたようです。
1907年、鉱床の品質が低下したため事業終了となりました。
毒物への耐性を得た魚
ボラックス湖は、盛り土のすぐそばにありました。
明らかに黄色い水をたたえた湖は、直径200m程度の円形。
平均水深は1m程度ですが、湖底の南端に巨大な噴出孔があり、深さ30mの最深部では100℃近い熱水が湧いているそうです。
水面近くの温度は37℃のぬる湯でした。
ヒ素・ホウ砂・鉛で汚染された湖に生息する唯一の魚が、ボラックス・レイク・チャブ。
どういうわけか毒物への耐性を得たコイ科の小魚です。
1993年、自然保護団体のThe Nature Conservancyは、絶滅の危機に瀕していたボラックス・レイク・チャブとその環境を保護するため、ボラックス湖を含む広大な土地を購入しました。
そんなわけで、湖での入浴は禁止されています。
もっとも、有害な液体に泥だらけになって浸かりたい人は少ないかもしれませんが……
湖岸には、熱水噴出孔またはその痕跡と見られるくぼみが複数見られました。
特に、ボラックス湖から更に700mほど北上したところにある一連の噴出孔は、狭義のボラックス・レイク・ホットスプリングスと呼ばれています。
噴出孔の縁の地面はもろく、転落すると命にかかわる高温のため、近づきすぎないように注意してください。
USFWS Pacific Region
まとめ
Borax Lake Hot Springs, Princeton, Oregon, U.S.
私の好み
種類:野湯
ルール:入浴不可
塩素消毒:なし
泉温:~38℃