温泉資源に乏しいアメリカ合衆国東部にお住まいの皆さん、お待たせしました。
ノースカロライナ州では、川のせせらぎを聴きながら温かい天然温泉に浸かれます。
歴史的なリゾートに咲く歴史的な花
アメリカのミシシッピ川より東側には、とにかく温泉が湧きません。
ニューヨーク州の有名なサラトガ・スプリングスも、冷鉱泉を沸かしたものです。
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参考ルーズベルト・バス&スパ(サラトガ・スプリングス) - ニューヨーク州
あのニューヨークに、天然温泉が湧いてるって知ってましたか? 冷鉱泉ですが炭酸シュワシュワのパワフルな泉質。 1935年創業の歴史的なバスハウスで入浴します。 サ ...

アパラチア山脈の奥深くにある小さな町、ノースカロライナ州ホットスプリングスはその例外。
ジョージア州アトランタから4時間弱、オハイオ州コロンバスから6時間強のドライブになります。

道端に放置されたカブース(車掌車)が目印。

フレンチ・ブロード川とスプリング川に挟まれた場所に温泉が湧きます。

ホットスプリングス・リゾート&スパが、この町にある唯一の温泉施設。
メインストリートを挟んで南側にあるのがRVパーク兼キャンプ場。

北側にあるのが貸別荘(バケーションレンタル)です。
うち四つの客室は天然温泉を引湯したバスタブを備えています。

日帰り入浴も積極的に受け付けています。
まずは、広大な芝生の庭園を通り抜けてオフィスへ向かいましょう。

この美しい庭園で、不思議なほど日本的な一角を発見。
苔むしたイワクラの手前に彼岸花が咲いていました。

心を奪われる光景だったので後日調べてみると、1854年にペリー提督が黒船で日本を訪れた際、同行した海軍大尉が三つの球根を持ち帰ったのがアメリカでの彼岸花の始まりだとか。
球根は大尉の姪に渡され、ノースカロライナの自宅の庭に植えられたところ自生し、アメリカ南部に広がったとのこと。

期せずして歴史の一端に触れてしまったようですが、当地の温泉の歴史にも見るべきものがあります。
ネイティブアメリカンのチェロキー族によって利用されていた温泉を、白人が「発見」したのが1778年。

1800年代初頭には鉄道の開通とともに、リゾート地としての発展が急速に進みました。
1886年にはもっとも壮大なホテル、マウンテン・パーク・ホテルが建設されました。

州初めてのゴルフコースを備え、建物は四階建て、200のベッドルーム、大浴場には16の大理石の浴槽が設けられていたそうです。
1917年の第一次世界大戦勃発の頃には人気に陰りが出ており、捕らえられたドイツ商船員の抑留所として政府に貸し出されることになりました。

戦争終了後もかつての栄光を取り戻すことなく廃業し、ほとんど忘れ去られていた頃に現オーナーによって買い取られたのが1990年。
敷地内にはところどころ遺構が残されています。

さて、日帰り入浴できるのは全て貸切風呂で、全16の浴室があります。

事前の電話予約はしておいた方がよいでしょう。
スタンダード・ミネラル・バス

私が利用したのは五つのグレードがあるうちもっとも安価なスタンダード・ミネラル・バス。
半露天風呂で川に面している点では全グレード共通です。

雨が降った後だったからか、清流というわけではありませんでした。

貸切スペースに扉はありません。

係員に誘導されてたどり着いた浴槽は、既製品のジャグジーでした。



少々粗末な印象を受けたものの、気にせず入浴することにしました。

川に向かって開けた立地ですが、対岸は森の中なので全裸でも差し支えありません。

二つの湯口から源泉が投入されていて、それぞれ微妙に温度が異なりましたが約39℃。
長湯できるぬる湯です。

無色透明の源泉はかすかに枯草の匂いがするような気がしましたが、周囲の環境のせいだったのかも。
自然いっぱいの中で周囲の目を気にせず温泉に浸かれるのは最高の時間でした。

シグネチャー・タブ
せっかくなのでもっとも高価なシグネチャー・タブも見ておきましょう。

基本的な構造は同じで、まさかのジャグジーさえ同一です。
異なるのはサンデッキに広がるラグジュアリーな空間。

浴槽が特注品だったらもっと夢があったのになあ、と思ったのはぜいたくな悩みでしょうか。

まとめ
Hot Springs Resort & Spa, Hot Springs, North Carolina, U.S.
私の好み
種類:日帰り、宿泊
ルール:貸切風呂
塩素消毒:感知せず
泉温:~39℃