アメリカ合衆国南部には現在、温泉がほとんど湧いていません。
ところが、歴史をひも解くと医療の発達、レジャーの多様化とともに衰退した温泉地がいくつか見られます。
テネシー州に残る最後の温泉を訪ねます。
ルビー滝
地下空間に存在する滝としては世界最大といわれているテネシー州ルビー滝。
Joshua Forrest - Ruby Falls (2014)
CC BY 2.0
地下300mより深くに位置する洞窟の天井から、落差44mの滝が流れ落ちる壮観。
滝の水は雨水と鉱泉が混ぜ合わさったものですが、ここでは当然入浴できません。
強烈な外見の薬湯
ルビー滝からテネシー州の州都、ナッシュビルまで約2時間のドライブ。
ナッシュビルから更に郊外へ向かうこと1時間半、ケンタッキー州との州境付近に、レッド・ボイリング・スプリングスという小さな町があります。
1920~30年代には10件以上の宿が立ち並ぶ温泉街を形成していたといいますが、今日でも変わらず営業している唯一の温泉宿が、こちら。
創業1924年の老舗宿で、客室数12室、家族経営の小さなホテルです。
玄関に立つと、いかにも温泉らしい硫化水素臭が早くも鼻を突きました。
こちらでは基本的に、マッサージとセットで温泉を利用することを想定しているようです。
マッサージ室を通り抜けて、施設に唯一ある浴室へと向かいました。
薄暗い浴室は貸切で供用され、小さなクローフット・タブが二つ設置されていました。
バスタブには温泉成分が付着して一見清潔感に欠けるようでしたが、実際には衛生的な問題はないでしょう。
冷鉱泉とそれを沸かしたものを浴槽の中で混合して、好みの温度に調節。
温泉は、一般に熱ければ良いというものでもありません。
泉温が低いことで成分の変質が抑えられ、特徴的な泉質が実現していることもあります。
この鉱泉は好例で、1時間ほど放置すると強い臭気の正体が析出して、にごり湯に変貌しました。
「ボイリング」という地名は沸騰しているという意味ではなく、この特徴的な性質のことを指しているのだそう。
かつては医療目的で用いられたことも理解できるパワフルな泉質で、その魅力はもっと広く知られるべきだと思いました。
まとめ
Armour's Red Boiling Springs Hotel, Red Boiling Springs, Tennessee, U.S.
私の好み
種類:日帰り(スパ)、宿泊
ルール:貸切風呂
塩素消毒:感知せず
泉温:加温湯