美しい景色と温泉さえあれば、壁も屋根も要らない。
そんな心意気を感じさせる尖った入浴施設でした。
前身はポリオ治療センター
モンタナ州ホットスプリングスの温泉街から北東へ15分のドライブ。
文字通り何もない牧草地にやってきました。

ワイルド・ホース・ホットスプリングスの泉源、マザー・ドラゴン間欠泉が発見されたのは1913年。
モンタナ州第3代州知事の娘、モリー・バートレットが生活用の井戸を掘っているときに発見したといわれています。

バートレットはMontana Warm Water Project for Crippled Childrenなるプロジェクトで資金を集め、小児まひ治療センターを建設。
1980年代初頭には公営リゾートとなり、1990年代初頭に民間へ払い下げ。

その時からワイルド・ホース・ホットスプリングスという名称になりました。
現在、日帰り入浴に加えてキャビン、ティピー、RVパーク、キャンプサイトの用意がありますが、宿泊可能かどうかは施設に問い合わせください。

悲劇を乗り越えて
温浴エリアは基本的に屋外。

受付と更衣室の付近だけ屋根があります。
ちなみに日中は水着着用必須、日没後は全裸での利用可。

コンクリート舗装の地面に設けられた六つの浴槽は、隙間だらけの壁と屋根に覆われていました。
と言うより、壁と屋根は無いに等しい状態。

類まれな構造は、2013年にここで起きた強姦殺人事件の後、意図してリノベーションされたことによるものだそうです。

この悲劇のあと、温泉は6年近くの閉鎖に追い込まれたといいます。

地域社会を震かんさせた閉鎖的な空間は一新され、極端に開放的な仕様となりました。

なだらかな丘陵と広大な牧草地を背景に入浴できる、特別な場所へと変貌したのです。

池に向かって突き出た木製のデッキからは、完全に屋外となります。

デッキ沿いには八つの飼葉おけが並び、アツアツの湯でなみなみと満たされていました。
これだけ多くの浴槽があるのですから、湧出量は相当多いことがうかがい知れました。

湯口での泉温50℃を掛け流し。



無色透明の湯は、控えめな硫化水素臭を伴っていました。

温泉街の湯より明らかにマイルドな臭気。
ツルツルの触感が顕著でした。

デッキから離れた池沿いには、小ぶりの飼葉おけ。

野湯のような野趣すら感じられる、虚飾をそぎ落とした施設でした。

まとめ
Wild Horse Hot Springs, Hot Springs, Montana, U.S.
私の好み
種類:日帰り、宿泊
ルール:水着着用、混浴(日没後)
塩素消毒:感知せず
泉温:~50℃