20世紀前半に打ち捨てられた未完のリゾート。
今なお湧く温泉への道のりは困難になりつつあります。
注意
私有地のため現在利用できないとの情報があります。現地の最新情報に基づいて訪問を検討してください。
アースシップ・バイオテクチャー
ニューメキシコ州タオスに拠点を置く建築家、マイケル・レイノルズが1970年代から開発した建築様式。
アースシップは、社会インフラや化石燃料への依存を最小限に抑えたオフグリッド住宅として開発されたもので、利用可能な自然資源、とくに太陽エネルギーと雨水を使用するように建設されています。
建築の知識がない人でも建てられるように平屋を中心としたシンプルな設計と、タイヤなど廃材を活用。
このスタイルは世界各国の小さなコミュニティに広まりました。
トラブルの絶えない温泉
アースシップ・バイオテクチャーから車で約20分。
マンビー温泉へのアクセスは、近隣のブラック・ロックと比べて格段に厄介です。
参考ブラック・ロック・ホットスプリングス - ニューメキシコ州の温泉
ニューメキシコ州北部、豊かな自然に囲まれた高地に、ネイティブ・アメリカンの伝統的な集落があります。 世界遺産に登録されている住居のすぐ近くに、温泉が湧いているという事実は見逃せません。 タオス・プエブ ...
まず、Googleマップが正確なルートを指し示しません。
乗用車で安全に乗り入れできるのは国道64号線から分岐するTuneドライブだけなので、間違いのないよう。
更に、Tuneドライブは平野部にもかかわらず後半は荒れた未舗装道で、かつ私道なのです。
そのため、この道路の通行は不法侵入とみなされる危険性があり、とくにコロナ禍で野湯への人気が過熱した結果、取り締まりが強化されている様子。
リオ・グランデ川沿いの駐車場までたどり着いたら、あとは深い渓谷の斜面を斜めに降りていくだけのハイキングです。
片道1km、右手に川の流れを見ながらいったん温泉の前を通り過ぎて折り返し戻ってきます。
川原の小高くなったところに、いわくありげな構造物がありました。
かつてのキャビンの遺構と思われます。
当地の温泉は、スペイン人が到着するずっと何百年も前からプエブロ文化の先住民によって利用されてきました。
19世紀に入るとヨーロッパ系アメリカ人による入植が進み、この温泉は駅馬車(ステージコーチ)で行ける人気の温泉地となりました。
1906年、イギリス系のアーサー・マンビーが源泉地を取得。
これは嘘、策略、盗みを伴う強奪であったとされています。
1922年ごろから、マンビーは「ロスト・スプリングス・オブ・ザ・アステカ」と名付けた豪華な温泉ホテルの建設に着手。
ところが1929年、リゾートは完成することなくマンビーは何者かによって惨殺されました。
強引なやり口で多くの恨みを買ったためといわれていますが、真相は不明です。
それ以来、この温泉はマンビーの幽霊が出る野湯として放置され、キャビンや浴場の遺構が崩壊しつつもそのままになっています。
プールは全部で三つ。
私はとくに、井戸らしき構造物の近くのこのプールが気に入りました。
透明度の高い源泉が砂地の底からこんこんと湧き上がり、その豊富な湧出量で水面が波立っていました。
無味無臭の源泉は泉温33℃。
夏場にはうれしい、ぬる湯です。
惜しむらくは、土地の権利関係が複雑で私有地への不法侵入として摘発される可能性がゼロではありません。
今も昔もトラブルの絶えない温泉なのです。
まとめ
Manby (Stagecoach) Hot Springs, Arroyo Hondo, New Mexico, U.S.
私の好み
種類:野湯
ルール:混浴
塩素消毒:なし
泉温:~33℃