アメリカには日本の宿があります。
ここは日本文化を愛するアメリカ人のための場所であると同時に、アイデンティティを確認したくなった在米日本人のための場所かもしれません。
補足情報
リノベーションが行われ、現在の様子と一部異なります。
日本風ペンション
ワシントンD.C.から1時間半のドライブ。
バージニア州に入ってしばらくすると、辺りはすっかり田舎。
ペンブローク・スプリングスへの道は、舗装すらされていません。
でも大丈夫、普通の車でもまったく問題ありません。
三角屋根が印象的なペンション風の建物が見えてきました。
この宿は趣味の延長で営業されているということで、普段は一週間の半分しか開いていません。
日本から移住された多恵子さんと、娘のリサさんが始めた日本の宿。
旦那さんのウォルターさんも日本在住歴が長く、息子さん含め、フロイド家総出の家族経営です。
洋風の建物の中に、所狭しと並ぶ和風の小物。
客室数は5部屋で、価格帯は二つ。
今回は安い方のMaple Roomを選びました。
高い方の部屋はより和のテイストにあふれていますが、こちらは和洋折衷。
浴衣はどの部屋にも用意されています。
見てください!
ペンブロークの湯と書かれた、旅情を誘うタオルが二つ。
これらが丁寧にセッティングされ、中心部に温泉マークが浮き上がっています。
何て無意味に見えて、繊細で、心動かされるのでしょう。
調度品だけでは表現できない日本の心がタオルに極まれり。
ささやかな畳マット以外、部屋にくつろぐスペースはありません。
広々としたロビーを自由に使っていいので、ここで過ごす時間が長くなるかもしれません。
テレビには日本の番組が映ります。
バルコニーからの眺め。
階下の風呂場の窓を開け放っても、同じ風景が見られます。
紅葉シーズンには、辺り一面燃えるように染まるようです。
加温循環の貸切風呂
二つある内風呂は、どちらも先着順の貸切制です。
帳場に備え付けてあるメモに書いておけば、晩と翌朝、何度でも貸し切れます。
まずはタイルの色が水色の浴室から。
家族で貸し切るには、かなり大振りの造りです。
ユニットバスにありそうな樹脂製の水栓を発見。
液体を触ってみると、え!?冷たい。
浴槽内の温度は40℃のぬるめ。
冷たい鉱泉が、浴槽内で加温循環されている様子。
日本ならではの洗い場があります。
波型の鏡、実用性はともかく、涙が出るほど日本を感じる一品です。
もう一つの浴室では、タイルの色が茶色です。
漁具がオブジェのように置いてあるのが目を引きます。
湯は幸い塩素消毒されていませんが、ほとんど白湯に感じられます。
日本の温泉法で規定する温泉には該当しないように思われましたが、含有成分がタイルに付着している様子は見られました。
ウッドデッキに出て外の風に当たることもできます。
もっとも、州法の制限でぬるめの湯加減のため、のぼせることはないでしょう。
私は加温湯の吐出口にぴったり寄って、暖を取りました。
日本の心がこもった朝食
翌朝の朝食は、ダイニングで日本食が食べられます。
なお、夕食も気まぐれで出してくれることがあって、宿泊の数日前に要否の確認があります。
調理場から漂う美味しそうな香り。
じゃーん!出てきました。
薄味、色彩の豊かさ、盛り付けの細かさ。
これこそが日本の心で、在米日本人が思い出したくなるアイデンティティの一つだと思います。
まとめ
Pembroke Springs Retreat, Star Tannery, Virginia, U.S.
私の好み
種類:宿泊
ルール:貸切風呂
塩素消毒:感知せず
泉温:加温湯