アメリカにかつて存在した巨大鉄道会社、アッチソン・トピカ・アンド・サンタフェ鉄道の謎多き遺構。
鉄道会社が運営していた温泉ホテルは廃業しましたが、源泉は今なお自噴しています。
補足情報
この「秘密」の場所を訪れる際にはゴミ袋を持参し、持ち込んだゴミの量の2倍を持ち帰ってください。そして、人々への敬意と優しさを忘れないようにしましょう。
山中に残された建築物
ラスベガスといっても、カジノで有名なネバダ州ラスベガスではありません。
今や知る人ぞ知るニューメキシコ州のラスベガスは、19世紀のアメリカ南西部で、もっとも繁栄した都市の一つでした。
その栄光を確かなものにしたのが、現在のBNSF鉄道の前身であるアッチソン・トピカ・アンド・サンタフェ鉄道の開通です。
サンタフェ鉄道は「ラスベガス温泉」なるリゾートホテルを郊外に建設し、観光客を当て込みました。
驚いたことに、このホテルには昭和天皇が宿泊した記録があるようです。
ホテルの廃業後、紆余曲折を経て、モンテスマ城として知られる建物はユナイテッド・ワールド・カレッジ(NPOの教育機関)の校舎へ転用されています。
それ以外の構造物はそのまま山中に残され、朽ちるがままになっています。
三つの温浴エリア
ギャリナス川を挟んでモンテスマ城と反対側に、泉源が現存しています。
大きく分けて三つのエリアに分散しており、まずはもっとも発見しやすい上流側から見てみましょう。
ガードレールが途切れているところから、川原に向かって少し降りたところに温泉が存在します。
奇妙なT字型の浴槽。
浅くて入浴には適しません。
源泉は無色透明で取り立てて臭気もありませんが、積年の析出物がこびり付いています。
木柵に囲われている部分に、三つの浴槽が階段状に設置されています。
最上部に位置する円形の浴槽では、モンテスマ温泉でもっとも熱い湯を楽しめます。
その泉温、50℃の熱々。
底に足が届かないほど深い立ち湯です。
浴槽内にはしごが設置されています。
土管の内部にいるような感覚で、景色は望めません。
あふれた湯はそのまま第二、第三の浴槽に流れていきます。
湧出量がやや不足しており、これら二つの浴槽では湯がなまっているようです。
私は何といっても、最初の土管型の浴槽が気に入りました。
身体の芯から温まる野湯は、アメリカでは貴重です。
川を少し下ったところに、もう一つの温浴エリアがあります。
一人用の小浴槽が二つ。
何を思ってこんなに頑丈な造りにしたのか、コンクリートで強固に築かれた構造物。
あふれた湯は、マス釣りで有名なギャリナス川に注ぎ込みます。
もっとも下流側のエリアには、三つの岩風呂が草むらに点在しています。
この地点からモンテスマ城に向かってわだちが続いています。
道なき道をたどっていくと、意味ありげな長方形の浴槽が空の状態で放置されていました。
昭和天皇が温泉を楽しんだとしたら、どの場所だったのでしょう?
川に突き当たった所で、進入禁止の立て札。
ここから先はユナイテッド・ワールド・カレッジの私有地です。
岩風呂に戻ってきました。
源泉は泥の堆積した底面から自噴し、浴槽毎に温度が異なります。
ラスベガスの市街地からアクセスしやすい立地とあって、地元民の集会所として親しまれているようです。
静かな湯浴みが希望であれば、早朝の訪問がおすすめです。
サンタフェ鉄道の威信をかけた温泉リゾートは、朽ちてなお、謎めいた存在感を示していました。
まとめ
Montezuma Hot Springs, Montezuma, New Mexico, U.S.
私の好み
種類:野湯
ルール:水着着用
塩素消毒:なし
泉温:~50℃