温泉と呼ぶのもはばかれるほどの、ぬるいだけの沼。
奇妙な歴史の交差点に存在していました。
イオセパ,ユタ
ユタ州ソルトレイクシティの南西120kmに、ハワイからの移民が住んでいたゴーストタウンがあります。
末日聖徒イエス・キリスト教会(モルモン教)に教化されたハワイの先住民が、イオセパに移住したのが1889年。
白人による苛烈な差別を逃れながら、ソルトレイク神殿にできる限り近い場所に居住するため、陸の孤島のような当地が選ばれたといいます。
Public Domain
ピーク時には228人もの人口を誇りましたが、ハンセン病の流行で衰退。
結局、住民のほとんどはハワイに戻ることを選び、1917年にはゴーストタウン化しました。
今日では墓地と消火栓以外に、ほとんど何も残っていません。
西部開拓の中継地点
イオセパからスカル・バレー・ロードを通り、北へわずか10分のドライブ。
ホースシュー・スプリングスはBLM(土地管理局)により維持管理されている、ちょっとした公園です。
駐車場とそれに通ずる道は未舗装ですが、ほとんどの車で問題なく到達可能。
キャンプは不可で、トイレすらありません。
ガゼボの下に三つの案内板を発見。
それによると、ホースシュー・スプリングスは西部開拓の重要な中継地点だったようです。
東海岸からカリフォルニアへの移民が使用したルートの一つに、ヘイスティングズ・カットオフがあります。
1846年、ドナー隊が苦戦しながらも通過し、カリフォルニア州ファラド・ソーキング・プール周辺で遭難。
参考ファラド・ソーキング・プール(ミスティック・ホットスプリングス) - カリフォルニア州の温泉
ドナー隊の悲劇の場所からもっとも近い温泉。 アクセスが簡単なため、壊れやすく貴重な野湯の一つです。 野ざらしの産業遺産 1840年代のアメリカでは、西部のオレゴン州やカリフォルニア州に移り住む開拓民が ...
極度の飢餓の末に、悪名高い食人行為に至ったことで知られています。
ヘイスティングズ・カットオフが不毛なグレートソルトレイク砂漠を横断する際、貴重な水場であったのがこの場所。
二つの泉が馬蹄形に隣接していることから「ホースシュー」と名付けられました。
小川を丸太橋で渡ったところにそれはありました。
無味無臭で泉温21℃のぬる湯。
水面は大量の藻で覆われ、地面もぬかるんだ粘土状で、快適な湯浴みとはなりませんでした。
どちらかといえば釣り場として人気を博している様子。
ほとんど忘れ去られた歴史の交差点として、近くを通ることがあれば立ち寄ってみてもよいかもしれません。
まとめ
Horseshoe Springs, Skull Valley, Utah, U.S.
私の好み
種類:野湯
ルール:混浴
塩素消毒:なし
泉温:~21℃