浴槽の底から自然に湧き出る温泉を排出するのに、配管すら必要ありません。
壁にぽっかり空いた穴がその役目を果たしています。
歴史的な溝
トゥルース・オア・コンシクエンシーズの歴史地区を歩いていると、格子状の街路に斜めに交差している溝を発見。
それとわかる目印は何もありませんでしたが、この溝こそ、この町の名称がホットスプリングスだった時代の1916年に作られた、画期的な構造物なのです。
リオ・グランデ川沿いの湿地帯に溝が設けられることで温泉の排水が容易になり、当地に数々の浴場が設けられるきっかけとなりました。
ロープにつかまって
ラ・パロマ・ホットスプリングスはこの溝沿いにある温泉宿で、日帰り入浴も受け付けています。
その前身は、1935年に建設されたモーテル、マーシャル・ミラクル・プールズ。
古びた建物はそのままですが、スピリチュアルな面を重視する人におすすめできそうな雰囲気にリノベーションされていました。
逆L字型のモーテル棟に面した中庭。
北西端に位置しているバスハウスの中は、繊細な雰囲気がありました。
ロビーには、興味深い足湯。
30分または1時間単位で利用できる貸切風呂では、水着着用は任意です。
大小さまざまな貸切風呂は地面に埋まっていて、砂利敷きの底から源泉が湧き出る足元湧出式。
窓が少なく、ともすれば圧迫感のある感じになりがちですが、壁に描かれた紋様が良いアクセントになっていました。
泉温は自然のままなので、貸切風呂によって36~41℃とかなりばらつきがあります。
実は、ラ・パロマについては入浴中の溺死に関する訴訟が起きています。
5年間に4人の死亡が確認されているというので、なかなかのものです。
訴訟では、40℃以上の湯に浸かる装置は国や州の安全基準に違反していると主張されているようですが、施設側は天然温泉の温度を下げることはできないと反論しています。
不幸な事件ではありますが、私は施設側の意見に基本的に賛同します。
地面から自然の力だけで湧き出た源泉が、壁に空いた穴から建物の外に落下しているだけの、究極にミニマルな温泉なのです。
その歴史的な価値と純粋な入浴体験は、何ものにも代えがたいものです。
溺れそうになったら、天井から垂れ下がっているロープにつかまってください。
まとめ
La Paloma Hot Springs & Spa, Truth or Consequences, New Mexico, U.S.
私の好み
種類:日帰り、宿泊
ルール:貸切風呂、水着着用
塩素消毒:感知せず
泉温:~41℃