郷愁を誘う天然温泉プール。
失われつつあるアメリカの温泉文化の残り香を感じました。
老朽化した建物
アイダホ・フォールズから1時間弱のドライブ。
1976年にアメリカ最悪規模のダム決壊事故を起こしたティトンダムの上流部に、グリーン・キャニオン・ホットスプリングスはあります。
長閑な景色に囲まれた天然温泉プールで、キャンプ場・RVパーク(フルフックアップ)を併設。
建屋の奥に白い岩肌が露出しているのが分かりますか?
これは温泉成分が析出した石灰岩です。
グリーン・キャニオン・ホットスプリングスの前身であるピンコック・ホットスプリングスは、あの丘の上にありました。
当地が史書に初めて出現するのが1812年。
太平洋岸北西部へ移住する開拓者に利用されたオレゴン・トレイル。
そのオレゴン・トレイルを切り開いた遠征隊、ロバート・スチュワート一行がひと風呂浴びた記録が残っているそうです。
温泉開発は近隣の町、シュガー・シティの発展と並行して行われました。
シュガー・シティで1903年に製糖工場が建設されるに際して、必要となった石灰が温泉周辺で採掘されました。
土地を所有していたピンコック家は、その後1912年に天然温泉を利用した水泳場を完成させました。
後年オーナーが代わり丘の上にあった水泳場は廃止され、1947年、現在の位置に温泉リゾートとして生まれ変わりました。
これがグリーン・キャニオン・ホットスプリングスの始まりです。
老朽化したプールハウスの内部。
入ってすぐのところに、ピクニックテーブルが所狭しと並べられていました。
このエリアの入場料は不要です。
水泳に興じる子供たちを親が外から監視するために、このような構造になっているのでしょう。
こちらはスナックバー。
駄菓子とソフトドリンクを販売していました。
スナックバーの脇をすり抜けた先に、プールの受付がありました。
執筆時現在、大人$9.75。
木造のパーティションが古風な、男女別の更衣室で水着に着替えました。
子供・大人で分かれたプール
屋内プールは37m×15mの巨大なものが一つ。
底面が傾斜していて、更衣室側は浅くなっていました。
水温は約36℃のぬる湯。
最低限の塩素消毒は感じられました。
冬の寒い時期でさえ、キッズが年中遊泳できる場所。
それがアメリカの温泉の本来の姿なのかもしれません。
1985年には、大人のためのホットプールが増築されました。
壁に囲まれた屋外にあり、上部には樹脂製の屋根を張れそうな骨組みがありました。
火照った体を冷ますコールドプールもありました。
2人サイズの小さな浴槽に13℃の冷水が注がれていました。
ホットプールでは、自然の雰囲気が感じられる湯口から源泉が注がれていました。
湧出点で46℃の源泉は、湯口では43℃とまずまずの高温を保っていました。
プール全体の温度は約41℃。
無色透明・無味無臭の泉質。
ホットプールで騒ぐ子供はおらず、じっくりと湯に向き合えました。
時代に取り残され忘れ去られるにはあまりにも惜しい、文化価値を感じる場所でした。
まとめ
Green Canyon Hot Springs & Resort, Newdale, Idaho, U.S.
私の好み
種類:日帰り、宿泊(キャンプ場)
ルール:水着着用
塩素消毒:あり
泉温:~46℃