テキサス州ビッグ・ベンド国立公園は温泉が湧くことでも有名ですが、それはリオ・グランデ川に突き出たラングフォード温泉のこと。
その近くに、もう一つの温泉が隠されていることは、ほとんど誰も知りません。
プラダ・マーファ
周辺にはさして見るべきものがない辺境の地、ビッグ・ベンド国立公園に行くことがあれば、プラダ・マーファに立ち寄ってみては?
2005年に発表されたこのインスタレーション・アートは、高級ファッションブランドのプラダの実店舗を模していますが、買い物をすることはできません。
ここは、野生生物が姿を現すような荒野のど真ん中。
この作品の当初の意図は消費主義への批判と解釈されていますが、作者の意図していないところで、その存在意義が変化しています。
SNS映えする風変りな観光地として消費されるようになり、批判しているはずの価値観を体現する側に回っているのです。
それも含めてアートだとすれば、面白い!
ターゲット・マラソン
プラダ・マーファの近くにもう一つの作品が存在します。
誰が、何のために作ったのかは明らかになっていませんが、明らかにプラダ・マーファへのオマージュ。
米国では知らない人のいない百貨店チェーン、ターゲットに似せた小屋が荒野にたたずんでいました。
リオ・グランデ・ヴィレッジ
東京都の面積の約1.5倍という広大なビッグ・ベンド国立公園。
温泉が湧くのは、メキシコとの国境をなしているリオ・グランデ川の川原です。
公園内には、整備されたキャンプ場が四つあります。
今回は、温泉にもっとも近いキャンプ場の一つ、リオ・グランデ・ヴィレッジ・キャンプ場に泊まりました。
洗い場や水洗トイレを完備していて、とっても快適。
キャンプ場には20世紀初頭に建てられた入植者の遺構が残っていたりして、なかなか楽しめました。
隠れ家的温泉
温泉へは、リオ・グランデ・ヴィレッジから歩いて行くこともできますが、往復2時間以上かかるので、ショートカットしました。
ラングフォードの駐車場に車を停めれば、そこから温泉まで徒歩10分程度。
ただ、今回のお目当ては別の温泉。
ラングフォード温泉の前を通り過ぎて、リオ・グランデ川沿いに更に下流へ向かいました。
地図にも載っていない無名の温泉なので、道案内は詳しめにしておきます。
駐車場に直結している道が左手の丘陵から下りてきて、合流。
更に直進すると、リオ・グランデ・ヴィレッジまでの距離を示す看板がありました。
道は川からやや離れて、右手に氾濫原を見下ろす高台を通過。
最初に現れる涸れ川が目印。
分かりにくいですが、涸れ川を渡るために大きく湾曲した部分の手前、右斜め後方に道が分岐していました。
仮にそのまま直進すると、道は再び川近くになるので、誤りだと気づくでしょう。
分岐した方の道は、緩やかに氾濫原へと降りて行きました。
数年に一度の洪水で温泉付近は洗い流され、地形は変わる可能性があります。
緑が生い茂っている辺りでは、進路はほとんど獣道並みに消えかかっていました。
ここまで来たら、獣になった気持ちで下草をかき分け、野生の勘で温泉を探すしかありません。
あの茂み、怪しい……
あった!
ラングフォード温泉のすぐ近くにあるのに、私は3度目の探索でやっと発見した、バンブー・プールです。
どう見てもバンブー(竹)ではありませんが、ヨシのような植生に完全に秘匿された立地。
メキシコ国境まで数十メートルしかないので、入浴中に国境警備隊に見つかったら、弁明が難しそう。
泉温は37℃のぬる湯。
源泉は泥っぽい底面からじんわりと湧出していて、あまり清潔な感じはありません。
それでもようやく見つけた秘湯に、「これが本当の隠れ家的温泉」と感無量でした。
まとめ
Bamboo Pool, Big Bend National Park, Texas, U.S.
私の好み
種類:野湯(要入場料)
ルール:水着着用推奨
塩素消毒:なし
泉温:~37℃