鉄道の旅客営業が廃止されて久しく、すっかり人気のない町に残る温泉宿。
そう遠くない昔に、カルト教団によって支配されていた狂気の温泉の歴史にも触れておきたいと思います。
「狂気の温泉」とはいかに
カリエンテという町の名前は、スペイン語で「熱い」を意味しており、その由来は町外れに湧く温泉です。
旧鉄道駅から徒歩圏内に、今なお温泉宿が残っています。
ザ・場末とでも呼びたい入口付近。
荒涼とした雰囲気は、何かを物語っているかのよう。
旅客輸送の途絶えた鉄路からの引き込み線が、かつては敷地内に伸びていたようです。
この歴史的なモーテルは、カルト集団の所有のもと運営されていた時期があります。
FLDS(末日聖徒イエス・キリスト原理主義教会)です。
FLDSとは、LDS(いわゆるモルモン教)と名称が似ていますが、別物。
かつて、モルモン教は一夫多妻制を敷いていましたが、公的には1904年に禁止されたことになっています。
実態は、近年まで一夫多妻制が残り続けた地域があり、そのようなモルモンの教義を受け入れやすい土壌に、カルト教団が巣食ったのです。
自身も87人の妻がいたというFLDSの教祖ウォレン・ジェフズは、このひなびた温泉宿を「結婚式場」として使用していました。
資産家の男性信者たちと、洗脳した少女たちを「結婚」させることで、教団への多額の寄付を集めていた手口は容易に想像できます。
それが執り行われる場所に、寂れた町の人目に付かない温泉宿がうってつけだったというわけです。
2011年、ジェフズには児童性的虐待などの罪で終身刑の判決が言い渡されました。
遡って2004年、モーテルは一般のオーナーに売却されています。
このように超ド級のいわく付き物件ながら、なかなかどうして魅力的な建築です。
凄まじい湯量
客室数全18室の建物の中央部分に、浴場があります。
屋根に付いている湯気抜きが目印。
浴室は四つあり、全て貸切での利用です。
日帰り入浴も受け付けていますが、宿泊客優先なので要注意。
電話で事前連絡しておけば安心です。
いよいよ浴室の鉄扉を内側から閉めて、鍵をかけます。
細長い浴室には、窓一つありません。
湯気抜きは、なぜか柄物の布で覆ってあります。
長椅子と折りたたみ椅子が、それぞれ一つずつあるだけの簡素な室内。
最奥部の浴槽内のレバーをひねると、凄まじい勢いで源泉が投入されます。
泉温は41℃。
ややぬるめの湯加減です。
しかし、この水流で湯気が立ちやすいのか、あるいは窓が無いことが影響しているのか、部屋全体が蒸し風呂のように温まってきます。
無色透明・無味無臭の単純泉を、怒涛の勢いでかけ流し。
寂れ果てた温泉宿に、秘めた想いのように激しい源泉が存在するとは思ってもいませんでした。
なお、米国では一夫多妻制が違法ですが、ジェフズはその罪に問われたわけではありません。
この辺りには、宗教が絡む根深い問題があるようです。
まとめ
Caliente Hot Springs Motel and Spa, Caliente, Nevada, U.S.
私の好み
種類:宿泊、日帰り
ルール:貸切風呂、温泉付き客室
塩素消毒:感知せず
泉温:~41℃