破壊と再生を繰り返す温浴施設。
西海岸ニューエイジ系温泉の筆頭、ハービン・ホットスプリングスは、3年の沈黙を経て復活しました。
山火事からの復活
毎年のように山火事が自然発生するカリフォルニア州でも、ハービン温泉の周辺はとくにハイリスクです。
商業的な温泉の始まりは古く、1856年といわれています。
以降、現在に至るまで大型のホテルが建設されたり、薬物まみれのヒッピー・コミューンになったり、度重なる山火事で焼け落ちるたびに歴史が塗り替えられてきました。
直近では2015年9月の大火「バレー・ファイアー」で、施設の95%を焼失しました。
2019年1月、見事に復活を遂げた施設には、しかし仮設の部分も多く見られます。
日帰り入浴客は、駐車場に設置されたプレハブ小屋で受付を済ませます。
ここからプール・エリアまで、徒歩で坂道を登っていきます。
宿泊客なら奥まで車で進入できますが、宿泊設備も急ごしらえのものがまだ大半。
周辺の丘陵は植林が進んでいるとは言え、炭化した樹木が目立ちます。
プール・エリアはテラス状になっていて、地階からエレベーターで上がります。
公共施設のようにがっちりとした建築物です。
What is Watsu?
エレベーターを降りると、大きなコンクリートのデッキが広がっています。
向かって右側の紺色のプレハブ小屋は、トイレ。
その奥にはスイミング・プール。
ところで、Watsu(ワッツ)とは何か知っていますか?
ワッツとは体温程度の温水の中で、セラピストとクライアントが一対になって行われる身体療法です。
"Water + Shiatsu"という語源のとおり、日本で経絡指圧を学んだハロルド・ダールが1980年に創始し、今や世界各地で施術されています。
そしてハービン温泉こそがその発祥の地なのです。
楕円形の大きな屋根に覆われたヘルス・サービス・プールは、ワッツ専用に設けられています。
エレベーターから向かって左手には、サウナの手前に三つのプールがあります。
ハート型のプールは不感温度の36℃に設定されています。
正にニューエイジ
最奥部の一角は、ハービンの心臓部のような場所です。
脇にある簡易テントのような共同の脱衣所で、衣服を脱ぎます。
この温泉はベイエリアから近いこともあって多くの客が訪れますが、Clothing optional(水着着用は任意)で知られています。
ウォーム・プールでは、一糸まとわぬ男女が湯浴みに興じている姿を目撃することになるでしょう。
Harbin Hot Springs
36℃程度のウォーム・プールの湯は、ホット・プールからオーバーフローしています。
小屋の中にホット・プールがあり、ここでは49℃の熱い源泉が掛け流され、浴槽内は46℃程度に保たれています。
浴感は弱いとろみがあり、はっきりとしたタマゴ臭を伴います。
大人が立って胸ぐらいまである深めの浴槽。
祭壇の下が湯口になっています。
今日のようにニューエイジ色が強くなったのは、1972年にゲシュタルト療法を行う施設として再出発したのが発端です。
ゲシュタルト療法とは何か?
それについて説明するのは避けますが、こちらの詩からハービン特有の雰囲気を感じてもらえると思います。
私は私のために生き、あなたはあなたのために生きる。
私はあなたの期待に応えて行動するためにこの世に在るのではない。
そしてあなたも、私の期待に応えて行動するためにこの世に在るのではない。
もしも縁があって、我々が出会えたのならそれは素晴らしいこと。
たとえ出会えなくても、それもまた同じように素晴らしいことだ。
フレデリック・パールズ『ゲシュタルトの祈り』
ホット・プール小屋の裏手は一段高くなっており、そこにコールド・プランジがあります。
いわゆる水風呂で、ホット・プールと行き来して温冷交互浴を楽しめます。
ワッツが日本の指圧の派生なのは、先ほど述べた通り。
ゲシュタルト療法の創始者は、京都・大徳寺での禅修行を経て、東洋的な瞑想や精神統一の体験を基盤に取り込んでいます。
混浴文化は、言わずもがな日本のもの。
点と点がつながって、まったく新しい文化が醸成された感じが、私は純粋に面白いと思うのです。
まとめ
Harbin Hot Springs, Middletown, California, U.S.
私の好み
種類:日帰り、宿泊
ルール:混浴
塩素消毒:感知せず
泉温:~49℃