世界で初めて地熱を主な熱源に使用した商業ビルの一つ。
超常現象の愛好家にとっても指折りの人気を誇る、いわくつき物件です。
盛りだくさんの歴史
通称ホット・レイク・ホテルへのアクセスは難しくありません。
州間高速道路84号線沿い、オレゴン州ポートランドから4時間のドライブ、アイダホ州ボイシから2時間半の地点。
La Grendeのダウンタウンから南西に14km離れた長閑な場所に、そのホテルはありました。
ホット・レイクの水面は静まり返って、ただならぬ雰囲気でした。
時空がゆがんだように崩壊したままの建物。
1979年にアメリカ合衆国の歴史登録財に指定されたレンガ造りの本館は、老朽化しながらも修復の跡がうかがえました。
温泉の歴史はきわめて古く、オレゴン・トレイルを切り開いたアスター遠征隊の1812年の記録に残っています。
当時から丘の麓の湖の一角に熱湯が自噴し、ネイティブ・アメリカンに神聖視されていたようです。
1864年、郵便局・鍛冶屋・ダンスホール・浴場などから構成される、現代でいうショッピングモールが建設されました。
創業当初の木造建築物は1903年に取り壊され、1908年には現存する本館が完成。
地熱暖房システムを備えた世界初の商業施設として喧伝され、105のホテル客室と60床の外科病棟が設けられました。
1917年にはユング・フロイトの信奉者であるファイ博士によって買収され、実験的・オカルト的医療を行う診療所としての側面を強めていきました。
1934年の火災で建物の大半を焼失。
第二次世界大戦中の1939年より、飛行学校と看護学校として利用されるようになりました。
1951年には老人ホームに改装され、その後精神病院に転用。
心霊スポットのお手本のような「超」いわくつき物件といえます。
1991年には廃墟化し、2002年まで破壊し尽くされ様々な超常現象が報告されました。
2003年より地道な修復が始まり、今日ではAirbnbを介して宿泊予約できます。
私はといえば、酒の力を借りて孤独な夜を明かすことに成功しました。
時折香る凶暴な硫化水素臭
温浴エリアはホット・レイクに突き出た屋外にあり、水着着用必須でした。
開放的でしゃれた雰囲気に仕上がっていました。
入ってすぐのところに湖に隣接した露天風呂が一つ。
中央部に円形の浴槽が三つ。
内部には正七角形(!)の木製ベンチがありました。
夕刻には日の入りを真正面に望むロマンチックな立地。
最奥部にはレンガの壁で囲われた、屋根付きの浴槽がありました。
どれも湯口から投入される温泉は41℃の適温に調整され、さほど特徴は感じられませんでした。
湧出点での泉温は93℃の高温泉のため、相当加水されているものと推察。
時折吹く風に乗ってワイルドな硫化水素臭が漂ってくるのに気づきました。
屋根付きの浴槽より更に奥の、立入禁止エリアからのようでした。
明らかに熱を感じる小川が湖に注ぎ込んでいて、その上流に泉源が存在することが容易に想像できました。
小川を挟んで向かいにはミステリアスな形状の、かつての浴場らしき建物が残っていました。
願わくは加水せず凶暴なままの源泉を楽しみたかったのですが、それは望みすぎかもしれません。
盛りだくさんの歴史だけで、私はすでにお腹いっぱいでした。
まとめ
The Lodge at Hot Lake Springs, La Grande, Oregon, U.S.
私の好み
種類:日帰り、宿泊
ルール:水着着用
塩素消毒:感知せず
泉温:~93℃