アメリカ最後の自由の地の一つ。
『不法占拠者の楽園』に湧く温泉は、驚くほど濁っていました。
スラブ・シティ
ソルトン湖の東岸、ニランドに近いの集落スラブ・シティは、第二次世界大戦中の1942年に開設されたアメリカ海兵隊基地「キャンプ・ダンラップ」の跡地にあります。
Thomas Hawk - Slab City (2014)
CC BY-NC 2.0
1956年までに基地のすべての建物が解体され、土地はカリフォルニア州に所有されることになりましたが、大量のコンクリート板(スラブ)は放棄されました。
そのスラブを建材に利用して不法占拠者が住み着き、今日では社会のメインストリームから外れて生きる人々を魅了する場所として知られています。
アナーキーの湯

ソノラ砂漠の過酷な気候の中で、公的な電気も水道もないスラブ・シティに敢えて住もうとする人には、何らかの事情があるはず。

夏季には約150人、冬季には約4,000人といわれる住人は、貧困層だけでなく定年退職者や芸術家、そして逃亡者など様々な人々で構成されています。

主要産業は観光業で、インスタレーション・アートが無造作に点在。

そんな集落の入口に温泉が湧いています。

ギフトショップの手前の、貯水タンクが林立している荒れ地に車で進入。

分かりやすい目印はなく、コミュニティとして温泉を積極的にアピールしたい様子はありませんでした。

温泉は円形の湯溜まりで、砂漠の地表に自噴。

いかにも温泉が湧きそうな地形には見えず、唐突感あり。

温泉が出るメカニズムは不明ですが、近隣の二ランド・ガイザーと見た目上の類似点がありました。



湯溜まりの周辺は一部コンクリートに覆われ、古い水栓が設けられていました。

湯の排出は南端の溝を介して行われ、溝の上には木製の橋が渡されていました。

泉温40℃。
湯口は視認できないものの、湯溜まりの中央部からガスを伴って源泉が湧き上がっているのが分かりました。

弱い硫化水素臭がするためかろうじて温泉らしさはあるものの、感覚的には泥水に近く衛生面では疑問符が付きます。

ここは湯そのものより、アナーキーな自由の風を楽しむスポットのように思われました。

まとめ
Slab City (Barraza) Hot Springs, Niland, California, U.S.
私の好み
種類:野湯
ルール:混浴
塩素消毒:なし
泉温:~40℃
近隣の泥火山
ソルトン湖直下にはサンアンドレアス断層が走っていることもあり、周辺では活発な地熱活動が散見されます。

二ランド・ガイザーは、世界的にも珍しい「移動する」泥火山で、ユニオン・パシフィック鉄道や州道111号線などのインフラに甚大な影響を与えています。
地熱発電所の隣には、粘度の高いタイプの泥火山が白煙をあげていました。
