約50年もの間、廃墟として放置された温浴施設が営業再開。
その見事な復活劇は、全米でもっとも感動的な温泉リノベーションと言っても過言ではありません。
ザ・バスハウス
サウスダコタ州ホットスプリングスといえば、その名の通り温泉街。

エヴァンス・プランジがある目抜き通りから外れた場所に立地しているモカシン温泉は、小粒でもぴりりと辛い日帰り入浴施設です。
-
参考エヴァンス・プランジ・ミネラル・スプリングス - サウスダコタ州の温泉
全米に散らばるHot Springsという地名だけを頼りに、サウスダコタ州まで遠征。 それ、どこだって? 歴代大統領の顔が刻まれた、あの岩山のある州です。 街歩 ...
良い香りが漂ってきそうな高級スパの装いですが、入浴なら事前予約は不要。

入場料は大人$25.00(執筆時現在)、18歳未満の子供は出入禁止です。
2019年の営業再開に伴って新造された建物は隅から隅までぴかぴかですが、当温泉は非常に古い歴史を持っています。

先住民が利用していた温泉地に白人が入植し、初めて浴場を建設したのが1881年。
ブラック・ヒルズ・スパと命名された素朴な浴場は、1888~1890年にかけて豪華なホテル、ミネッカータ・バスハウス&ホットスプリングス・ホテルとして生まれ変わりました。

アメリカ合衆国の各地で温泉文化が花開いた時代です。
そしてその他多くの事例同様、人々は温泉への関心を失っていき、ホテルは1963年に廃業。

その後約50年もの間、野ざらしになって崩壊していたといいます。

これを5年かけて丁寧に改修したのが現在の姿です。

一種異様な雰囲気さえ感じられる温浴エリアは、既存の構造物を限りなく活かしたリノベーションの傑作といえます。

まずは温浴エリアの手前に建っている小屋、ザ・バスハウスで水着に着替えましょう。



ホット・プールズ
ザ・バスハウスを出てすぐのところは水路状に低くなっています。

これは浴槽からあふれた温泉を排出すると同時に、低い位置にあった旧施設のバスタブを保存・展示するための構造です。

その奥には二つの浴槽が階段状に設けられ、これらはホット・プールズと呼ばれています。
上段が40℃、下段が38℃ありました。

源泉温度は34℃なので、加温されていることになります。

なお循環なし、塩素消毒なし。
ザ・プール・ハウス
プールとプールをつなぐような形で建てられているのが、ザ・プールハウス。

室内は暖炉で温められていました。
泉温が低めなので、このようなスペースがあるとうれしい。

窓から見えるのがモカシン・プールです。
モカシン・プール

箱形のモカシン・プールは当温泉の心臓部のような場所です。
先住民の時代まで遡れるこのプールには泉源が集中しており、ザ・プール・ハウスに面した至る所から湯が湧き出ているのが分かります。

源泉は無色透明、無味無臭のぬる湯。

深さは大人でも底に足が届かない場所もあり、底面は自然の岩盤です。
1912プール

モカシン・プールから小さなトンネルを潜り抜けると、つながっているのが1912プール。
その名の通り1912年に建設されたプールです。

往年のポストカードを見てください。
Moccasin Springs Natural Mineral Spa
あの特徴的なトンネルが、そっくりそのまま残されていることが分かります!
違いはといえば、第一にモカシン・プールの上屋が取り壊されていること。

第二に1912プールの中央にダムが設けられていることです。

ダムの端からは、大量の源泉が滝のように流れ落ちています。

排水池の中は藻が繁殖し、入浴できません。

かつてホテルのあった周辺を散策していると、興味深い小屋を見つけました。

中に入ってみると、歴史を感じさせる壁の下から別の源泉が染み出していました。
このスペースを何に活用しようとしているのかは分かりません。

しかし、旧施設へ最大限の敬意を払ったモカシン温泉が、今度はどんな過去を現在によみがえらせるのか、これからも目が離せません。
まとめ
Moccasin Springs Natural Mineral Spa, Hot Springs, South Dakota, U.S.
私の好み
種類:日帰り
ルール:水着着用
塩素消毒:感知せず
泉温:~34℃