アメリカ合衆国で現存するもっとも美しい「湯屋」の一つ。
日帰り入浴は受け付けておらず、独特の静寂が保たれていました。
到達するのが難しい
サマー・レイク・ホットスプリングスはオレゴン州の奥地、州道31号線沿いの高地砂漠にあります。
最寄りの町、ベンドから車で南下すること約2時間。
日帰り入浴は受け付けていないため、公式サイトからオンラインでの宿泊予約が必須です。
宿泊オプションはRVスポット、キャンプ場、キャビンを選べます。
キャビンについては原則、二連泊からの予約となるので注意が必要。
このように到達するのが難しいのは、過度の混雑がないことの裏返し。
この地域に人類が住み始めたのは少なくとも1万4000年前といわれています。
共和党最初の大統領候補者であり探検家でもあったジョン・C・フレモントが1843年に通りがかり、温泉のすぐ北にある湖をサマー・レイクと名付けたことが名前の由来。
古くから自噴していた温泉は主にかんがいと地域住民の入浴用に利用されており、今日のように商業リゾートの体を成したのは1958年といわれています。
1997年、現在のオーナーであるDuane Grahamが温泉を含む土地を購入。
古民家を改装する建築請負業を営んでいたDuaneは、当時の小規模な温泉付きRVパークに大きな可能性を感じていたといいます。
彼のもとで、浴場などの歴史ある建物を残しながらキャビンが増築され、露天風呂が新設されるなどリゾートの拡大が進みました。
さて、私が宿泊したのは”PONDER”という素朴なキャビン。
クイーンサイズのベッドが二つ、床下暖房とフルキッチンを備えた充実の設備でした。
何より、大きな窓から眺める広大な砂漠の風景が最高。
神殿のような静寂
温泉はキャビンから少し離れた草地にありました。
周囲の建物からあえて距離を置いている浴場は、いかにも象徴的なものに私の目には映りました。
これが1929年に建造された浴場。
波型のトタン板で覆われた木造の建物は、少しゆがんでいる姿がさらに印象的に感じられました。
三つ設けられた天井の湯気抜きも素晴らしい。
内部に入る前に、北側に新設された露天風呂を見てみましょう。
ここには三つの岩風呂があり、それぞれ三人ぐらい入れるサイズ。
浴場から伸びるパイプから新湯が絶えず供給され、湯口での泉温は44℃でした。
湧出量が十分にあり消毒なしの源泉かけ流し。
硫化水素を含んだ複雑な臭気を伴う極上の湯でした。
清掃時以外、24時間入浴可能。
日中は水着着用が必須ですが、日没後の午後9時以降は全裸で問題ありません。
いよいよ歴史的な浴場の内側に潜入です。
中央部に4.5m×9mのコンクリート製のプールがあり、緑の色を帯びた源泉が注がれていました。
その周囲を小さく仕切られた更衣室が取り囲み、入り口付近には二つのシャワールームがありました。
昼間でも薄暗くイルミネーションで飾られ、木柱が整然と立ち並ぶ様子はどこか神殿を思わせました。
ここでの温度は37℃程度のぬる湯。
十分な深さがあり長湯できました。
木製の壁には、訪問者たちによって無数の文字が刻まれていました。
まとめ
Summer Lake Hot Springs, Summer Lake, Oregon, U.S.
私の好み
種類:宿泊
ルール:混浴、水着着用
塩素消毒:なし
泉温:~44℃