人里から離れ、まるで忘れ去れたかのような雰囲気さえあるキャンプ場。
特徴的な冷鉱泉が湧いていました。
一度忘れられたリゾート
テキサス州からオクラホマ州にかけての平野部には、どういうわけか硫化水素を含む泉温の低い泉が点在しています。

サルファー・スプリングス・キャンプはそれらのうち、商業化されている数少ない例の一つです。
州都オースティンから北西へ1時間50分のドライブ。

最後の集落ベンドからは、人里離れた荒野をダート道で横断。

ダート道はおよそ15分続き、いよいよ心細くなってきた辺りで目的地に到着。

サルファーは硫黄を意味していますが、米国式の"Sulfur"ではなく英国式の"Sulphur"と表記されているのは初期の移民の影響でしょうか?

コロラド川沿いの低地に位置しているサルファー・スプリングス・キャンプ。

場所としての歴史は長く、1850年頃には既に硫黄泉の薬効を信じて飲んだり浸かったりする人がいたそうです。

1885~1888年に最盛期を迎え、病気の治療のために州内から多くの人が集まり、地域で最大の集会所としてダンスホールも有していたとのこと。

人々の泉への関心は世界恐慌の時代に失われ、リゾートは長い年月にわたって放棄されることになりました。

1961年にキャンプ場として復活を遂げ、家族経営のまま現在に至ります。



今日では三つのキャビンとRVフックアップを備えていますが、依然として時代に取り残されたような雰囲気がありました。
タマゴ臭がプンと香る

コロラド川を上流に遡った突き当りに、くだんの硫黄泉はありました。

泉温23℃。
大半の源泉が使い切れずにコロラド川に流出していました。

一部は地中の配管を通じてプールの中へ流入。

プールは源泉由来のにごりのためエメラルドグリーンに見えました。

ひんやりと冷たい水に浸かると、ふんわりとしたタマゴ臭に体が包まれました。

温泉や泉の薬効がまことしやかに信じられていた時代とは異なり、今日のアメリカ合衆国では硫化水素臭は一般に悪臭として認知されています。

ましてや体が温まる温度でもないサルファー・スプリングス・キャンプの泉が、こうして商売として成立しているのは奇跡的な現象に思われました。

この壊れやすい、美しい場所が人々に忘れ去られず、ありのままで世界に存在していることを願います。

まとめ
Sulphur Springs Camp, San Saba, Texas, U.S.
私の好み
種類:日帰り、宿泊
ルール:水着着用
塩素消毒:感知せず
泉温:~23℃