人口密集地に近いにもかかわらず、謎に包まれた野湯。
誰も行きたがらないようなハイキングコースが障壁となって守られています。
注意
不法侵入とみなされるリスクがあります。現地の最新情報に基づいて訪問を検討してください。
ロナルド W. キャスパーズ・ウィルダネス・パーク
カリフォルニア州オレンジ・カウンティに住んでいる読者はたくさんいそうです。
ディズニーランド・リゾートやエンゼル・スタジアムのあるアナハイムから、南東へ40分のドライブ。
オルテガ・ハイウェイの名称で知られる州道74号線が、サンタ・アナ山脈を越えようとしているところ。
温泉のある地点は、道路からの直線距離で50m程度しか離れていません。
しかし、周辺の立ち入りは厳重に制限され、不吉な防護柵で覆われていました。
森林局の消防署がある辺りでHot Springs Canyon Roadが分岐し、その道沿いから整備されたピクニックエリアを視認できましたが、進入禁止。
教育委員会から認められた関係者だけが利用できるようです。
温泉へ合法的に近づくには、オルテガ・ハイウェイを引き返し、ロナルド W. キャスパーズ・ウィルダネス・パークに入る必要があります。
入場料は車1台当たり$3.00から。
キャンプ場を併設する郡立の美しい公園。
しかし、肝心の温泉へはここから往復約16kmの徒歩となります。
ハイウェイ沿いの温泉に行くために、かなりの長距離を歩かなくてはならないのです。
道中の前半にはそれなりに楽しめる景観がありました。
しかし、後半は交通量の多いハイウェイと完全に並行し、行き交う車の騒音で疲弊。
温泉を所有している郡は、一般人の利用を避けたいと願っており、馬鹿げたハイキングコースによって実質的にその存在を秘匿しているといえます。
歴史的に重要なサン・ファン・ホットスプリングスは、決して忘れ去られるべき存在ではありません。
スペイン人が入植する以前から、相当数のネイティブ・アメリカンの集落が温泉周辺に存在したといわれています。
カトリック教会が1776年に設立したミッション・サン・ファン・カピストラーノの領地の一部として、温泉付近に牧師館が建設されました。
1888年に出版されたカリフォルニア州のガイドブックでは観光客にとって重要な目的地として記され、1920年代にはオレンジ・カウンティを代表する一大観光地に成長。
リウマチや梅毒に効能があるとされ、ホテル、浴場、スイミングプール、ダンスホールなどが建設されました。
大恐慌の時代に閉鎖に追い込まれた後、1960年代には素行の悪いヒッピーの溜まり場として悪名をはせました。
薬物乱用、猥褻行為、殺人事件を経て荒廃した温泉はその後、1980~1992年にかけて民間の温泉リゾートとして再興。
当時の運営者は、サン・ルイス・オビスポにある別の温泉リゾート、シカモア・ミネラル・スプリングスの経営において成功をおさめましたが、サン・ファン・ホットスプリングスは失敗例となりました。
参照シカモア・ミネラル・スプリングス・リゾート&スパ - カリフォルニア州の温泉
卵の腐ったようなにおいの温泉が好きなら、ここは外せません。 ロサンゼルスからの小旅行にぴったりのラグジュアリーホテルです。 予約時に注意 L.A.から太平洋岸を北西へドライブすること約3時間。 カリフ ...
運営者によれば、オルテガ・ハイウェイの拡張にあたってカリフォルニア州運輸局が周辺の樹木を伐採。
人里離れた雰囲気が魅力だった温浴スペースは騒々しい道路から丸見えとなり、経営に支障をきたすようになったとか。
事業撤退後、土地を貸していた郡は温泉の有効な利用方法を見つけられず、今日に至ります。
伝説の温泉
さて、気の遠くなるようなハイキングが終わりました。
トレイルから少し下った斜面に、複数の泉源が見つかりました。
もっとも活発な泉源の温度は48℃。
リゾート施設をまかなうほどではないまでも湧出量はそこそこあり、硫化水素臭を含む気泡を伴って自噴していました。
あふれ出た湯は、階段状に設けられた複数の湯溜まりへ。
その流れとは別に、地面から緩やかに染み出しているぬるい湯だまりも複数。
これらの繊細な地熱活動が、人口密集地の近くでそのまま残っているのは驚くべきことです。
開発することもなく、破壊することもなく、放置という奇妙な手段をとったオレンジ・カウンティ。
伝説のサン・ファン・ホットスプリングスが再び地域を代表するスポットになったとき、私は当地を再訪するでしょう。
まとめ
San Juan Hot Springs, San Juan Capistrano, California, U.S.
私の好み
種類:野湯
ルール:水着着用推奨
塩素消毒:なし
泉温:~48℃