ネバダ州は厚い雲に覆われていました。
雨と泥でぐしゃぐしゃになりながらたどり着いた牧草地に温泉が噴出し、それを引湯した飼葉おけは至高の露天風呂になっていました。
牧場にあふれる湯
米国では、ネバダほど優れた野湯が集中している州は他に無いかもしれません。
泉温が高く、勢いよく自噴し、そして比較的アクセスが良いという三拍子そろった野湯が多く見られます。
ただ、たいがい未舗装路の先にあるので、雨天時はぬかるんで面倒なことになります。

リース・リバー温泉は私有地の牧場の中にあり、日中は土地所有者の厚意で開放されています。
家畜の脱走を防ぐため、進入の際には有刺鉄線の門を確実に開閉してください。

ほどなくして道が荒れてきたところで、車を降りました。
500メートルほど先の大地に白煙が見えます。



自噴して行き場を失った温泉が、辺りを水浸しにしています。
地盤は温泉と雨水で緩くなっていて、靴が泥だらけになってしまいました。

沼へと続く湯の川は案外細く、幅30~40センチほど。
その向こうにお目当ての露天風呂が見えますが、まずは源泉を観察することにします。

50℃を超える熱々の源泉が、小高い丘から勢いよく流出しています。
いよいよ泥だらけになりながら、丘のてっぺんまで登ると……

絶景かな、絶景かな。
頂上部分が大きくえぐれ、その中でふつふつと源泉が煮えたぎっています。

穴の断面をよく見ると、丘全体が温泉の析出した石灰華(トラバーチン)で形成されていたことが分かります。

平たんな盆地の真ん中で、唐突に熱湯が噴き出している光景は、ネバダならではの不思議といえるでしょう。

水路の途中には細いパイプが設けられ、流れ落ちる源泉の一部を、高低差を利用して露天風呂へ引いています。

大半の湯はそのまま、最初に見た沼地へと流され、再度、地中に染み込むのを待っています。
360°のパノラマ
かつてはこの辺りの地面に、石造りの浴槽が設けられていたようです。

どういうわけかそれは取り壊され、今残っているのは緑色の樹脂製の飼葉おけのみ。
背面には湯けむりを上げる丘が。

正面には析出物でコーティングされた地表の向こうに、山々を望みます。

このパノラマを全部独り占め。
こんな贅沢はなかなかありません。

汚れた衣服を脱ぎ捨て、素っ裸で湯に飛び込みます。
―熱いッ!

浴槽内の温度は、44℃程度。
熱さを我慢して入っていると、雨にさらされて冷えた体に、たちまちエネルギーが戻ってきます。

源泉は金気臭を放ち、含有成分の豊富さを感じさせます。
一方、自噴して間もないため酸化が進まず、無色透明で新鮮さが際立っています。
この風呂は良い、いや、良過ぎる。
まとめ
Reese River Hot Springs, Lander, Nevada, U.S.
私の好み
種類:野湯
ルール:混浴
塩素消毒:なし
泉温:~50℃