モナルカ蝶の保護区から車で1時間ほど離れた村の突き当りに、こんな素敵な温泉リゾートがあります。
含鉄泉の酸化を利用した見事なグラデーションは必見です。
隠れ家的なリゾートホテル
ミチョアカン州の州都モレリアと、メヒコ州の州都トルーカを結ぶ連邦道路15号線を離れ、フンガペオという集落に入ります。
道はトゥスパン川に向かって延々と降下し、ひどくローカルな空気感が漂います。
日本のひなびた温泉街の入口によくあるゲート式の看板に「アグア・ブランカ」と書かれていて、少し安心。
それにしてもとんでもない所に来てしまったな……と思っていると、宿に到着です。
すると、スタンバイしていた小学生ぐらいの少年5人が走り寄って、頼んでもないのに駐車の手助けをしたり、洗車しようとしたり、勝手に荷物を運ぼうとしたり……
そのバイタリティにやれやれ、と思いながら、この村で小遣い稼ぎするならここしかないんだろう、と思ってチップを払います。
アグア・ブランカの敷地内はがらりと変わって、鬱蒼としたジャングルに静かな時間が流れています。
ゲストルームは広くありませんが、民芸調の家具やモナルカ蝶の壁飾りがあり、ちょっとしたリゾート感覚です。
宿の周辺に食事処は一切無いので、夕食と朝食が必要なら、チェックイン時にレストランを予約してください。
ふだん持ち込みのお惣菜で安く済ませる私も、今回は朝食のみ予約。
オール・メキシカンのビュッフェです。
個人的には、メキシコ料理で迷ったらスープを選んでおけば大概美味いのです。
この立地でこれだけのものが食べられるのなら大満足の内容です。
「魅せる」含鉄泉
温泉があるのは、屋外のみ。
ちょっと感激するぐらいの美しい浴槽群です!
湯に浸かりながら、レストランの方向を振り返ります。
源泉温度はわずか32℃。
訪問時は12月でしたので湯から上がると肌寒く、夏場向きの温泉といえます。
湯口は水面下に一か所だけあって、ガスの噴出を伴いながら勢いよく掛け流されています。
ホテル建物に一番近い温浴槽の深さは、胸の下まで。
源泉の投入はそこにしかなく、湯が新鮮なためうぐいす色をしています。
計六つに分割されているプールは、全部合わせると長さ20メートルほど。
残り五つのプールには、最初の温浴槽から源泉が自然流入しています。
これらのプールは必ずしも入浴を想定していないのかもしれません。
湯の入れ替わりが十分でなく衛生的には疑問符が付きますが、鉄分を多く含む泉質を敢えて段階的に酸化させることにより、美しいグラデーションを演出しています。
テマスカル
さて、広い敷地内はつり橋があったりして、散策を楽しめます。
飲泉所らしきものを発見。
これを手に取って口に含んでみると、弱い甘みが感じられました。
別料金でテマスカル(Temazcal)も体験できます。
黒いビニールで覆われているのが、7~12世紀に隆盛を極めたトルテカ文明を発祥とする蒸し風呂です。
熱源は温泉ではなく熱した石で、これに水をかけて蒸気を起こします。
子宮の象徴とされる土製の窯の中で心身ともにリセットし、再び胎内から生まれ変われると伝えられています。
テマスカルの裏手には小さな動物園があります。
アヒルが温泉の池で泳いでいるのが見られます。
トゥスパン川に一段下がった河岸段丘では、温泉が自然湧出しているのが確認できます。
悠久の時を経て形成された析出物の崖に接しています。
見上げると、このとおり―いつからこの場所に温泉が湧いていたのでしょう。
源泉は熱くこそありませんが、それでもわざわざ訪れる価値のある、隠れ家的な温泉リゾートでした。
まとめ
Hotel Agua Blanca, Jungapeo, Michoacán, Mexico
私の好み
種類:宿泊
ルール:水着着用
塩素消毒:感知せず
泉温:~32℃