オレゴン州ポートランドは、各種調査機関のアンケート結果で、「もっとも住んでみたい都市」の上位に常に格付けされる、いまもっともホットな街の一つです。
モダン・ヒッピー文化ともいうべき、自由な空気感の漂う街からわずか1時間半のドライブでたどり着くのが、山深い湯小屋です。
温帯雨林を歩く
ポートランドの冬は雨季で、水蒸気を多く含む西風が太平洋から吹き付け、カスケード山脈にぶつかって大量の雨を降らせます。
これによって市街地からほど近い場所に豊かな温帯雨林が存在し、そこに温泉が湧きます。
マウント・フッド国有林内の駐車場には通常、係員がいます。
温泉利用者は一人当たり$5.00(執筆時現在)のリストバンドを購入する必要があります。
温泉まで片道2.2m、渓流沿いのハイキングコースを歩きます。
私が訪れたのは雨が一日中降り続いた日の翌日でしたが、道はぬかるむことなく良く整備されていました。
多くのハイカーとすれ違います。
自然を愛する「ポートランダー(ポートランドの住人)」ならずとも、人気の高いコースであることがうなずける美しい風景が続きます。
渓流から少し離れた斜面の中腹に、温泉が湧きます。
1880年に探鉱者ボブ・バグビーが発見した源泉を利用して、1920年代に営林署が湯小屋を設けました。
1979年、放置されたキャンドルが引火して全焼の憂き目に遭いましたが、その後ボランティアによって再建されました。
朽ち果てた浴場
源泉は全部で三つあり、そのうち二つが入浴用に利用されています。
もっとも湧出量が多いのがこちらの源泉で、共同風呂(Lower Bathhouse)と貸切風呂(Main Bathhouse)の二つの建物へ高低差を利用して引湯されます。
湧出点の泉温は57℃の熱々です。
この湯がそのまま浴槽に注がれるため、バケツで清水をくみ入れないことには入浴できません。
共同風呂の様子です。
David Silverman - The new tubs at Bagby Hot Springs (2011) CC BY 2.0
四つの樽風呂が並び、このエリアは水着着用必須 (Clothing Required)。
全裸で入浴したければ、貸切風呂を選んでください。
貸切風呂の建物はすき間から隣の客が見えるほど朽ち果てていますが、五つの小部屋に分かれています。
週末には入浴待ちの行列ができ、長時間待たされることもあるようです。
そのため、一回当たりの入浴時間は45分に制限されています。
杉の木をくり抜いた細長い浴槽に、PVC製のパイプから源泉が注がれます。
笹濁りの湯は無臭で、ツルツルとした触感が特徴的です。
すき間だらけの板壁を、ピースシンボルなどいかにもヒッピーらしい落書きが飾ります。
さて、バグビー温泉の良い点ばかりを褒め称えるのはこれくらいにします。
左の共同風呂、右の貸切風呂の建物の下方を見てください。
おびただしいゴミが見るも無残に散乱しています。
自然回帰を主張したヒッピー文化の頂点として語り継がれている、1969年のウッドストック・フェスティバルがゴミ山を残したのと同様、自然を愛する「ポートランダー」が、山奥の温泉を汚損しているのは、アメリカ人のお家芸と言っていいかもしれません。
まとめ
Bagby Hot Springs, Mount Hood National Forest, Oregon, U.S.
私の好み
種類:野湯(要入場料)
ルール:水着着用、貸切風呂
塩素消毒:感知せず
泉温:~57℃