泡付きたっぷりのぬる湯。
温泉地としての歴史は、思いのほか浅いのです。
風変りな歴史
コロラド州道133号線沿いの野湯、ペニー・ホットスプリングスはいつも多くの人でにぎわっていますが、その2km北にある温泉宿アヴァランチ・ランチは知る人ぞ知る存在です。
参考ペニー・ホットスプリングス - コロラド州の温泉
北米屈指のスキーリゾート、アスペン。 その近隣に、周辺住民の反発に遭って廃業した温泉が今なお湧いています。 プロパガンダ・パイ 何も考えずに山間部のペニー温泉まで来たのはいいものの、腹が減ってきました ...
羊たちを横目に見ながらメインハウスへ。
元々は宿泊者専用の温泉でしたが、最近になって日帰り入浴もオンラインで予約できるようになりました。
赤いメインハウスはアンティークショップを併設。
宿泊の場合は15以上の快適なキャビンに加え、4つのワゴンを選択できます。
ワゴンは西部開拓時代を思わせる幌馬車そのもので、二人のこぢんまりとした旅行にぴったり。
温泉プールへの近さも魅力です。
設備は最小限でしたが、グランピングの一種だと思って楽しめました。
ワゴンの向かいにある共有スペースには、電子レンジ・冷蔵庫付きのキチネットがあって困りませんでした。
アヴァランチ・ランチの歴史は風変りです。
牧場そのものは昔から存在し、現在のオーナー一家が取得したのは1950年。
夏季限定のキャビンリゾートとして人気を博していましたが、当時温泉はなかったのです。
隣の牧場で温泉を掘り当てたのは、ようやく2008年。
ペニー・ホットスプリングスの下流の川沿いに温かい水が湧くことは知られていたものの、多大な費用をかけて温泉井戸の掘削に踏み切るのは賭けのようなものだったそうです。
水利権などの法的な問題をクリアし、2010年には隣の牧場からアヴァランチ・ランチにパイプラインが引かれました。
こうして、古き良き時代を思わせるキャビンリゾートは、真新しい温泉宿としての顔を持ち合わせました。
芸術的に美しい屋外プール
屋外の温浴エリアには、高低差のある地形を活かして三つのプールがありました。
水着着用は必須。
男女別の更衣室の正面にあるのが、もっとも低い位置にあるプール。
もっとも広く、水温は32℃で冷たく感じられました。
湯は析出物の付着した岩の上から、カーテン状に注がれていました。
その過程でミネラルが酸素と反応し、美しい緑褐色に着色しているというわけです。
階段を上がったところにはプールが2つありました。
湯加減は38℃程度。
プールの底には小石が敷き詰められていて、自然の雰囲気。
こちらのプールは地面から一段高いところにありました。
他のプールの入浴者の視線と交錯しないように、さりげなく高低差を設けた秀逸な設計。
おや、こちらの小屋から源泉があふれ出ていますね……
「敢えて」みすぼらしい納屋
長年の風雪をしのいできたような風貌の納屋。
その内部に二人サイズの樽風呂が一つ潜んでいました。
隙間だらけのみすぼらしい納屋を「敢えて」活かしたセンスの良さ。
つい最近になって温泉を引いたとは、とても思えません。
浴槽のサイズに比べて新湯の投入量が多く、新鮮な状態で源泉が提供されていました。
湯口での泉温は39℃のぬる湯。
炭酸ガスを含み、身体が微細な泡で包まれました。
湯面では、金気臭を放ちながら気泡が弾ける音。
この納屋の存在は、できることなら誰にも教えたくないと思いました。
まとめ
Avalanche Ranch, Redstone Historic District, Colorado, U.S.
私の好み
種類:宿泊、日帰り
ルール:水着着用
塩素消毒:感知せず
泉温:~39℃